ナルト叙事詩とかのぶろぐ

ナルト叙事詩の紹介を中心に、興味のある神話や伝承について自分の勉強も兼ねて徒然にまとめることを目的にしたブログです。趣味の範囲なので更新は不定期になります。

ナルト叙事詩についての雑記

 

急な質問だが。

「神話といえば何か」と聞かれて、まず出てくるものはなんだろうか。

 

ギリシャ神話?絵や彫刻とかのイメージだろうか。詳しい人はヘラクレスとか個別の英雄の名前も語るかもしれない。

日本神話?馴染み深く、神社でお祈りしたことのない人はいないだろう。

北欧神話?ファンタジーの題材として有名だ。トールキンなどもそうだし。

仏教や聖書の話ももしかしたら神話の一種なのかもしれない。

 

他にもエジプト神話。インド神話ケルト神話。中国神話。インカ神話。などなど。

ちょっとマニアックになってきただろうか。

さて、世界には文明の数だけ神話があり、民族の数だけ伝承がある。

その中で一つ、私の興味を捉えて離さないのがナルト神話、あるいはナルト叙事詩という物語群である。

 

 

 

 

ナルトというと、鳴門の渦潮やら、ラーメンの具材やら、忍者の漫画やら、そうしたものを想像するだろうが、そういうものではない。

 

ナルト叙事詩とは、ロシアの南側、カスピ海黒海の間にあるコーカサス山脈の麓に位置する民族の語り継いできた神話であり、叙事詩である。

このコーカサス地方は、古い名前をコルキスとも呼ばれていた。コルキスとはギリシャ神話に出てくる国の名前である。つまりギリシャ人にも知られており、黒海の端の国として何らかの交流があった可能性も高い。

また乗馬の始まった地域はこの黒海カスピ海に挟まれたエリアではないかとも推定されている。古くから多くの騎馬民族が東に西に移動し、多くの文化を広め、もしくは持ち込んだ。

キリスト教化が早くから進んだ地域もあった。事実、ナルト叙事詩にはキリスト文化圏の影響が強く、唯一神がおり、天使じみた精霊たちはキリスト教の聖人の名前を冠したものも多い(中身は全く違うが)

 

つまり、大変に文化的な交流が多い地域で育まれた叙事詩なのである。 

更にこの叙事詩はそれぞれの民族で内容が違う。オセット、アブハジアチェチェンといったような民族がそれぞれに語り継ぎ、互いに題材を借り合いながら育てていった物語である。

故に、一口にナルト叙事詩と言っても、登場人物も違えば、物語も異なるのだ。

 

 

 

私が特に好きなのは、オセット人のナルト叙事詩である。

ナルトとは、民族の名前であり、もしくは種族の名前である。

この「ナルト」の意味するところは厳密にはわかっていない。だが、ナルトとは彼ら伝承を伝えた者たちにとっては、過去の英雄であり、巨人であり、光であり、自分たちが見習うべき手本でもあったという。

ナルト達は人の身には過ぎたる剛力を持つ者も多い。

魔法を使うものもいる。

天の神々を滅ぼしかけたという者さえ存在した。

当時の聴衆にとって、それはどれだけ驚嘆するべき存在であったか。

 

ナルト叙事詩は長く口伝であった。

叙事詩によっては鉄線に囲まれた砦があり、銃を持ったナルトが登場すると聞いたことがある。

時代によって移り変わり、近年になってようやく文字として書き留められたのだ。

 

 

 

さて、ナルト達はどう生きたのだろうか。

彼らは宴を開き、力比べをし、愛するべき相手を追い求め、そして武勇と報酬を得るために旅をした。

ナルトの世界は、山と海と平地が全てだった。彼らは山に住み、海の神を深く信奉し、たびに出て武勇を誇った。話によってはトルコ(トゥクトゥク)に遠征するという話も残る。

更に天界と死者の世界、そして海の底の世界なども存在した。

上下にも、水平方向にも、彼らが旅をする世界は広かったのである。

 

彼らの外の世界は異界であり、未知だった。

 

私の好きな話にソスランが巨人と出会う話がある。

ソスランという男は、ナルトの中でも別格に近い力を持ちながら、力自慢を鼻にかけて失敗するというエピソードがまれに残る。

 

こういう話である。

 

ソスランは当時のナルトの中でも最も強く、力比べにも飽きてしまう。

そこで力試しに外の世界を冒険するのだが、彼が指先程度にしかならないくらい大きい巨人の一家に簡単に捕まってしまう。巨人の優しい母親の協力で辛くも逃げ出すのだが、追ってきた巨人たちに追い詰められて、更に巨きな大巨人に助けを求めると、その大巨人はいともたやすく巨人の一家を蹴散らした。

ソスランはその大巨人こそ最強だと褒め称えるが、大巨人は首を振る。

大巨人はかつて、彼自身がつま先程度にしかならないくらい巨大な羊を飼う羊飼いに追い立てられて、散々な目にあったことを語るのだった。

 

 

途方も無い話だが、別格の力を持つソスランをたやすく捕まえる巨人がおり、その巨人をたやすく蹴散らす大巨人がおり、しかもその大巨人は更に巨大な羊飼いにひどい目にあっていたということだ。

 

ソスランは大巨人から口止めをされて帰路につき、それ以降その巨人たちが物語に登場することはないが、コミカルなような、空恐ろしいような、そんな世界がナルトの村の外には広がっているのである。

 

 

さて、日本ではあまりナルト叙事詩は有名ではない。

どうも一部のゲームなどで部分的に登場しているとは聞いているが、日本で聞いたことがあるのは、バトラズ、サタナ、クレタルゴン、ワステュルジ、そしてなぜかサイネグ・エルダーくらいなものであり、主要キャラクターとも言うべき、ソスランやシュルドン、ウリュズメクやヘミュツ、ドン・ビュッテルといった他のキャラクターはほとんど脚光を浴びていないのが現状ではないだろうか。(ソスランとシュルドンについては北欧神話との比較で雑誌に掲載されていたが)

 

バトラズは『アーサー王伝説の起源』という、アーサー王の起源がアラン人やナルト叙事詩にある、といったような話で紹介されたことで割と一部の物語は読めるのだが、その他のキャラクターの物語はそんなに日本語訳が存在しない。

知られていないのだが、どうにも日本のWikipediaや他のフリーweb辞典などの内容を見ると伝聞に次ぐ伝聞で内容が独り歩きしている感もあり、加えてパーツはわかるが全体がわからない、というような感じになっているような気がしている。

 

 

そこで読破に向けて勉強中という身ではあるものの、自分の勉強やまとめも兼ねて、特に今回はロシア語のサイトや『Tales of the Narts, ancient mythsand legends of the ossetians』等を参考にてナルトの物語の概要を徒然に書いていければということで立ち上げた次第である。

ただし私はあちこちの神話に興味が飛ぶ性分のため、ここではナルト叙事詩の紹介を主軸に据えながら、その他にも興味のある神話や伝承等の事項について自分で勉強をしつつ、雑多に紹介する目的で活用していきたい。

 

なお多くの場合、日本語訳をそのまま翻訳するというのはできないため、あくまで概要を記載していくに留める。

 

また中身に誤りが含まれるかもしれないが、そこはご容赦いただきたいと思う。

 

 

 10月1日 ブログを始めるに当たりの雑記