ナルト叙事詩とかのぶろぐ

ナルト叙事詩の紹介を中心に、興味のある神話や伝承について自分の勉強も兼ねて徒然にまとめることを目的にしたブログです。趣味の範囲なので更新は不定期になります。

タラの息子達

厳しい冬が来たとき、ナルトの村の牛や馬達は飢えた。旅をしてきたウリュズメクに聞くと、海沿いのタラの息子らが守る土地ならば草木生えて豊かな土地だという。しかしタラの息子らは強力で、一人目から家畜を守られたとしても、二人目からは守ることはできまいという。
誰がいくべきかを皆で考えたがソスランが選ばれる。
一人目の息子のムガラは大男で、自分達の牧草地が食まれていることが信じられないと思った。それほどの敵知らずの強い男であった。
ソスランは、自分がソスラン自身に雇われた貧しい羊飼いだということにして、沢山の無理難題をムガラに課す。ムガラに対しソスランならできる、という話をするとムガラは対抗した。ムガラは難関を悉く達成していくが、最終的に海の神にソスランは祈り、ムガラを氷漬けにした。
ムガラは自分のカミソリで首を切られねば死なぬ男であった。ムガラは彼の家からカミソリを持ってくれば自死しようとソスランに言ったが、ソスランは疑い、二本の木の間に掴んで持ってきた。ムガラは生きているとは思わなかったと言い、自死する。

さらにムガラは死ぬ前に、死んだ後自分の脊椎を奪って腰に巻けといってこと切れた。ソスランはこれも疑い、最初に木に巻きつけると、木はボロボロになった。いくつもの木を消費した後、ようやく腰に巻いた。
二人目のビビツがやってきた。同じように難題をクリアし、ビビツは海の神への祈りさえ(海を体の上に乗せても)課題をクリアしてしまう。


ソスランは負けを認めて、ナルトの国に年一人の若者と娘を連れ帰ることに承諾してしまう。
家畜を無事に連れ帰ったことに喜ぶナルトを尻目に、ビビツを連れ帰ってきたソスランは嘆く。
サタナはそれを察し、ビビツから秘密を聞き出す。ビビツはサタナに伝えた。自分の強さ、勇気、魂ははるか彼方の要塞の中の鉄製の箱に入っているのだと。そしてビビツ自身の剣を戸にかざすことでそこに行けるのだと。
サタナは薬草でビビツを眠らせた。ソスランは要塞に鷹を飛ばし、彼の強さの源を取って来させる。
そしてビビツを起こし、強さ、勇気、魂の象徴である鳩(なぜ鳩??)をちぎって、ビビツを殺した。

そしてタラの土地は三つのナルトの家に分けられた。

10.ウリュズメクとカラン・クアック

ウリュズメクは遠征に赴いたとき、小屋の前に宴の準備ができているのを見つけた。ウリュズメクがシャシリクに祈りを捧げると、シャシリクは男性の姿に変わり、ウリュズメクを自分の家に招待した。男性は宴の中で彼はビガーと名乗り、ワステュルジの甥であると言った。またビガーの父親はカラン・クアックに殺されたのだと言った。

カラン・クアックは人間の血を飲む怪物で、その鞭は叩いたものを好きな姿に変えることができる。名前は「飽くなき強欲」という意味で、食べれば食べるほど空腹になるという。父親は墓石に変えられ、自分は食べ物に変えられ、まさに食べられる寸前であなたの祈りに助けられたのだ、とビガーは語る。

ウリュズメクはその話を聞いたあと、カラン・クアックの寝床にこっそり近づき、ムチを奪ったあと彼を起こした。カラン・クアックは自分のムチで殴られて老いたヤギに変わり、逃げたところを狼に捕まえられた。

ビガーの父親は人間の姿に戻り、喜んだ一家は、ナルトのサタナとウリュズメクの家で宴に呼ばれた。

 

9.サタナはウリュズメクといかにして結婚したか

サタナは数年で大きくなり、村の中の誰よりも美しい少女に育った。

彼女は自分の夫にふさわしいのは誰かを考えた。だが、異父兄弟のウリュズメク以上にふさわしいと思える男性はいなかった。

その頃、ウリュズメクはアレガテ家のエルダという美女を妻に迎えようとしていた。サタナは一計を案じた。

 

サタナは魔法使いであり、ウリュズメクの妻となるエルダの手助けをするふりをして邪魔をした。ウリュズメク達が遠征に行っている間に宴の用意をしておくようウリュズメクはエルダに頼んだ。エルダは準備をし、ナルト達の宴に必ず必要となるエールを発酵させようとしたが、サタナがこっそり邪魔をしたため、全く発酵しなかった。

何日かたってウリュズメク達が帰ってきた時、エルダはすっかりウリュズメクの怒りに怯えていたが、サタナは気を利かせるふりをして「私がなんとか発酵させてみせます。それと場を和ませたいので、ウェディングドレスとベールを一着用意してくれませんか」と頼んだ。エルダは疑わずに了承し、サタナは魔法でエールを発酵させた。

ウリュズメク達の宴が盛況に終わったあと、ウリュズメクは酔って寝てしまう。サタナはエルダのウェディングドレスを着て、魔法で扉を締めて、ウリュズメクの寝床に潜り込んだ。ウリュズメクはサタナを妻と間違えた。そしてサタナは夜の時間を長くして部屋を暗くした。エルダはウリュズメクの寝床のドアを叩いたが、全く開けられる様子のないことに嘆いて死んでしまった。

魔法の夜を終わらせたあと、ウリュズメクは夜を共にした女性の正体に気づいて、サタナを非難した。「お前はなんてことをしたんだ。いったい誰がこんなことを許すだろうか」サタナは「人の興味は3日と持ちません。私の言うとおりにすればわかります」と答えた。

ウリュズメクは進行方向に背中を向けるようにしてロバに乗り、ナルト達が会議をするための広場に現れた。

ウリュズメクが広場を一周した時、若者たちは大笑いしたが他のものは笑わなかった。

二度目は笑った者たちは嘲ったが、他の者達は笑わなかった。三度目は誰も笑わず、長老たちの何人かが「ウリュズメクのような男のすることだ、なにか深い理由があるのだろう」と訳知り顔に言った。

ロバに乗ったウリュズメクがサタナのもとに帰ったあと、サタナは言った。「彼らは私達の関係を最初は嘲るでしょうが、やがてそれもなくなるでしょう」

そうしてウリュズメクはサタナを妻へと迎え入れた。

 

ナルトの母サタナとウリュズメクという長老役として活躍する二人の馴れ初めです。以降ウリュズメクは老人として登場することが多い(ヘミュツはそうでもないのですが)一方で、サタナはそうでもありません。神に近い存在と思われていたのかもしれません。

 

アレガテ家とは、ナルトの一族の名前の一つです。アレガテ家、エクセルテカッテ家、ボラテ家の三家があり、聖職者的なアレガテ家、戦士としてのエクセルテカッテ家、富裕者・生産者としてのボラテ家として、デュメジルは三権能の紹介例としてこれらを挙げました。
それぞれの家名が始祖の名前を冠しており、ボラテ家とエクセルテカッテ家は特に仲が悪く、両家は何度か全滅に近い殺し合いをしていたのだと思われています。

 

 

8.サタナの誕生

ワーハグやゼラセは程なくして死ぬ。

ゼラセはウリュズメクとヘミュツの二人に、自分は恐ろしいものに狙われているので、死後墓を三日守る様にと言った。

ウリュズメクが初日と二日目を守ったが、自分が信用されていないのでないかと腹を立てたヘミュツに三日目の番を代わる。だがヘミュツは死んだ母を狙うものなどおるまいと思い直し、宴に心惹かれて持ち場を離れる。

墓の中にかつてゼラセに騙されたワステュルジが現れて、彼女の死体を鞭で打つと死体は若返った。彼はゼラセと交わると去っていった。

一年後、シュルドンが墓の底から声が聞こえると言うと、中から赤ん坊が現れた。

彼女はサタナと名付けられた。

 

 

ワステュルジは彼の馬と猟犬にもゼラセを襲われたと言う話を聞いたが原文が探し切れていない。その場合生まれるのは名馬ドゥルドゥルと、犬の始祖とされるシラムだという。ゼラセの地母神的な性格を思わせる話でもある。

7.ウリュズメクとヘミュツはいかにして祖父を見つけたか

ウリュズメクとヘミュツは成長して弓の名手になる。

悪戯好きのヘミュツは少女クルダバシュに弓を射掛けて水瓶を壊し、矢で服を裂いた。彼女は「私に強さを見せつけるなんて簡単なことよ。本当に強いと言うなら年老いて野に去り死んだはずの貴方達の祖父ワーハグを見つけてきなさい」と言って、二人を怒らせた。

若い二人は長老達の会議に顔を出し、ワーハグの居場所を聞く。

二人がワーハグの居場所を聞き出し訪れると、祖父は息子達が蘇ったのかと驚いた。二人は祖父を連れて帰ると、祖父の家をきれいにした。

ワーハグは息子の妻であったゼラセを見て、自分の妻として引き取った。

 

 

 

参考:参考書籍によると、オセチア人は未亡人をその親族の未婚の男が妻として迎え入れるとある。

6.ウリュズメクとヘミュツの誕生

ゼラセはエクセルテグの子を身篭っていた。

彼女の母は「ナルトの国に行きなさい。彼らは自分の村で生まれたものしか自分たちの仲間であると承認しません」といい、ゼラセを送り出した。

彼女は行く先々でナルトの国の場所を聞いた。それ以外は口を開かなかった。

やがてナルトの国のついた時、彼女は「私はエクセルテグの妻です」と答えた。長老達は喜び、エクセルテグの塔の最上階に住まいを作ろうとしたが丁重に断った。

ゼラセは一番下の層の日陰の牛小屋に居を構え、そこでウリュズメクとヘミュツを産んだ。

 

 

参考書籍によるとオセチア人は塔に住み、上層階を住居、下を家畜小屋にしたとある。

5.エクセルとエクセルテグの死

しばらくあと、海の上で彼を待つ兄のことが気がかりになり、エクセルテグはゼラセを連れて海の上に戻る。

エクセルテグは食事の狩りのために席を外したが、ゼラセは先にそっくりな顔をしたエクセルに出会い触れようとする。エクセルは彼女が弟の妻だと察し、剣を地面に突き刺して操を建てたが、ゼラセは急に冷たくなった夫に泣いてしまう。

その時、エクセルテグは新妻の元へ戻ると、彼女はエクセルのそばで泣いていた。

エクセルテグは怒って矢を放ち、「二本の矢が一本に戻り、彼女に触れたところを貫いて殺すよう」呪いをかけた。エクセルは小指を突き刺され、息絶えた。

エクセルテグは自分が兄を疑い殺してしまったことに気づき、自害する。

(ドンビュッテルの息子たちが呪った通りの結果となった)

 

ゼラセはひとり残されて悲嘆に暮れたが墓を作ることもできない。

そこに戦士たちの守護者である精霊ワステュルジが三本足の馬に乗り、狩猟犬を連れて現れた。彼はゼラセに恋をし、二人の墓を作る代わりに自分と結ばれるよう望んだ。

ゼラセは了承し、ワステュルジは墓を作ったが、ゼラセは約束を違えて水浴びをすると言ったまま、海の底の自分の故郷に戻ってしまった。

ワステュルジは彼女の欺瞞に憤慨し、死の国までも追って、いつかゼラセを捕まえることを誓う。

 

 

エクセル、エクセルテグの物語はここまでですが、エクセルテグの一族(エクセルテカッテ家)は今後のストーリーの主軸となる一族です。彼ら兄弟は狼のワーハグを親に持つ双子ということで、ローマの始祖ロムルスとレムスの双子と比較される場合があります。

 

ワステュルジは三本足の馬に乗る、男や兵士の守護者と定義されます。ゼラセのストーリーでは悪役ですが、コーカサスの男たちにとっては重要な守護者であり、現在の国名ジョージアにも関連する「聖ゲオルグ」の化身ともされる人気の高い精霊です。サタナの父親でもあります。また三本足の馬はハデスなどが乗っている即ち「死者の馬」である他、天空と地上を行き来する、馬に乗った戦士の守護者という点では、インド・ペルシャのアシュヴィン神を彷彿とされる部分も見受けられます。